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特許法第200条の2(秘密保持命令違反の罪)にまつわる優しさについて

特許法

 

こんにちは。

近頃精神世界の探求ばかりしていた私にとっていわば法律書を読むことは現実世界の優しさ(理屈の通った)に触れることができる数少ない機会です。

中でも特許法は最近法改正が目まぐるしく行われ最先端?の優しさに触れることができこれ以上の方法はひとりではほかに思いつきません。

 

では本題に入ります。

特許法第200条の2にまつわる優しさ

 

まず特許法の第196条(侵害の罪)などのように特許法には罰則規定が設けられています。

特許法第196条 (侵害の罪)

 

特許権又は専用実施権を侵害した者(第101条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

とあります。この条文には、最近の平成18年の一部改正によって、抑止効果を高める観点から、罰金の上限が引き上げられ、また、懲役刑と罰金刑の併科が導入されたといった背景があります。

中でも、特に平成10年の一部改正によって、旧来、設けられていた第2項が外されているのです。この第2項には、特許権等は以下の二つの理由から親告罪*1とされる規定が定められていました。

 

 

  1. 私益であること
  2. 人格権的な要素が含まれること等

 

参考:特許長編 工業所有権法(産業財産法) 逐条解説[第19版] 594ページ

 

しかし現在では、私益ではあっても、研究開発費が増大している中、侵害により権利者が被る被害が甚大になっていることや、出願人の割合として、法人が高いことから、人格権的な要素が薄まっていることなどにより、第2項は削除され、特許権又は専用実施権の侵害罪は非親告罪となっているのです。

 

特許権をはじめとした工業所有権法を専門に取り締まる機関はまだ日本にはないので警察官がその役割のほとんどを果たすことになりますが、実際のところ、どれくらいの数が訴追されているかは知りません。もしかしたら近い将来、小説図書館戦争に登場したような組織が特許の世界で出来るかもしれませんね。

 

 

さて本題に戻ります。

しかし第200条の2(秘密保持違反の罪)はこのような定められています。

 

  秘密保持命令に違反した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、これを併科する。

2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

3 第1項の罪は、日本国外において同項の罪を犯したものにも適用する。 

 

第200条の2は平成16年の裁判所法等の一部改正により新設された規定ですが、このように親告罪とする定めが設けられています。なぜでしょう。

 

 

僕はあまり深く考えていませんでした。まぁそういうものなのだからそうなのだろうと。しかし実は営業秘密に関する不正競争防止法違反の罪も第200条の2と同様に親告罪としているようですね。これは専門としていた労働基準法の競合他社への転職の問題とも少し関連してくるので興味がわきました。

ところで、ヒントは裁判所法等の一部改正により新設された規定という部分にありました。

 

 

二項は、秘密保持命令違反の罪の審理では、秘密保持命令の対象となった営業秘密の内容が審理に現れることが想定されるところ、刑事裁判手続が公開の法廷で審理されることは憲法上の要請であり、これを非公開にすることは刑事裁判の性質上困難であるため、秘密保持命令によって保護されるべき営業秘密が刑事裁判手続において一層侵害されるリスクを伴うことから、本罪を親告罪とし、その訴追を営業秘密の保有者にゆだねることとしたものである。なお、秘密保持命令違反の罪により害を被ったもの(刑事訴訟法230条)とは、当該秘密保持命令の対象となっている営業秘密の保有者を指すものである。

 

 参考:特許長編 工業所有権法(産業財産法) 逐条解説[第19版]601ページ

 

感動しました。条文から優しさと愛がにじみあふれています。

みなさんにとっては当然のことなのかも知れませんが、当事者にとって何がベストであるかというのは、たとえ客観的には相手方によって当事者が権利を侵害されているようにみえても第三者にはわからないということなのですね。様々な状況を想定し、当事者が望む行動をとれるように知性によって枠組みを提供しているということに感動しました。すごいですよね。

 

可能であればこれからもこうやって法律の中にある優しさを紹介しながら情報を提供できればと思います。

 

最後に「優しさに触れることで素直になれたらいいね」。これはEXILEのHEROという曲の冒頭の歌詞です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:告訴がないと公訴を提起することができないこと